先週とは対照的に、今週の経済カレンダーはややまばらで、トレーダーはトランプ大統領のFRB選任や、ロシアの原油購入に関する二次的な関税の脅威に対してインド(その他)がどう反応するかなどを思案している。

FRBのアドリアナ・クグラー総裁が退任したことで、トランプ大統領はFRB理事会にハト派色を注入する絶好の機会を得た(クグラー総裁自身が政策タカ派とはほど遠い人物だったとはいえ)。つまり、トランプ大統領はFRBをより利下げしやすい組織に形成する能力があり、先週の雇用統計が暗いものであったことから、インフレ率が急上昇しない限り、9月には米国の利下げがより自由に行われるようになる可能性がある。
潜在的なインフレはどこから来るのだろうか?米国大統領がロシア産原油の購入国に対して100%の二次関税をかけると脅している。この脅しが現実になった場合、ロシア産原油が買われなくなるか、あるいは買われ続けても100%の関税が適用されるか、どちらのシナリオでもインフレになる可能性が高い。エネルギー価格によって消費者物価指数(CPI)が上昇すれば、FRBが金利を引き下げられる可能性がある。とはいえ、米国経済への直接的なインフレ効果は、ロシアの石油供給が世界のエネルギー市場から事実上排除されることに比べれば、100%の二次関税が適用されるシナリオの方が小さいかもしれない。

トランプ大統領は米国金利の引き下げを主張する一方で、ロシアの石油購入者に100%の二次関税をかけると脅している。エネルギー価格とインフレを上昇させる可能性のある行動をとりながら、低金利を達成するのは難しい。この脅しが実行に移されるのか、それとも米大統領が考え直すのかを見守りたい。
エネルギー市場に関しては、原油価格はロシア産原油の買い手に対する二次的な関税の脅威にはあまり反応しておらず、OPEC+が来月再び増産を決定することに今のところ焦点が当てられている。米国産原油は、7月末には70ドル前後で取引されていたが、現在は65ドル近辺に低迷している。しかし、ロシア産原油の買い手に対する二次関税が発動されれば、(具体的な発表内容とロシア産原油の買い手の反応次第ではあるが)価格の上値が絞られる可能性がある。

先週の米雇用統計を受けた米利回りの低下は、金価格にとって好材料となった。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが実施される可能性が高まったことで、米国債利回りは上昇し、金は3400ドルの大台を射程圏内に戻した。トランプ大統領がスイスに対して39%の関税を課したり、インドに対して暴言を吐いたり、関税をかけたりするなど、関税の幅を広げていることも、不透明感を高めており、金に有利に働いている。注目すべきレベルとしては、テクニカル的にも心理的にもレジスタンスとなる3400ドルがあり、その後には3418ドルのもう一つのレジスタンスポイントがある。サポートは3360ドルと3338ドルである。
FXでは、雇用統計が振るわず、その結果9月のFRB利下げの可能性が高まったことで、米ドルは7月中(ドルインデックスは3.4%上昇)よりも脆弱になっている。しかし、スイスフラン(米国の関税率39%の脅威による)と英ポンド(今週木曜日に予想されるイングランド銀行の利下げを控えて)の奮闘は、米ドルへの全体的なダメージを抑えるのに役立っている(本稿執筆時点で98.35のサポートを上回り、99.10のレジスタンスを下回る98.70で取引されているドルインデックスで測定)。