関税の緊張が和らいだことで、世界市場は4月第1週の慌ただしい動きから一転、安定した足取りで今月を終えている。解放記念日(4月2日)の後、S&P500指数はわずか2日間で約10%下落したが、トランプ政権による関税の一時停止の発表が反発のきっかけとなった。その後、トランプ大統領がFRB議長にパウエル氏を起用することを公然と検討するなど、様々な波乱があったものの、S&P500種指数は月初とほぼ同じ水準まで上昇している(今月はまだ1セッション残っている)。

4月の関税による極端なボラティリティは帳簿に残るものとなった。現在、貿易協定がまもなく締結され、「解放の日」に発表された関税水準よりもはるかに低い関税水準になるとの楽観論もあるが、米中間の進展があれば、リスク資産が最も注目するのはそれである。さらに、米中協定が長引けば、世界の成長懸念が再び前面に出てくる可能性がある。基本的に、市場は現在「貿易協定監視」の状態にあり、これが4月から5月へ向けての主要なセンチメント・ドライバーとなる。
金は先週(4月22日)の3500ドルへの急騰から反落し、3300ドルの大台の両側を行き来している。トランプ、ベッセント(財務長官)、ルトニック(商務長官)はそれぞれ、今後の貿易取引について明るい発言をしており、そのため安全資産の需要が一歩後退し、金価格もそれに応じて緩やかになっている。金の下げは今のところ抑制されており、ディップが発生すると、買い手は金に対して熱心なままである。3296ドルがいくらかのサポートとなり、その後3275ドルがより強固なサポートとなる。上値抵抗線は3372ドルの手前の3346ドルである。貿易取引が始まれば、金の動きは鈍るかもしれない。しかし、トランプ大統領の政策決定スタイルは、2025年の市場を神経質にさせている。

米ドルが3年ぶりの安値から回復したことも、金にとっては逆風となった。先週98ドル台を割り込んだドルインデックス(DXY)は、99.25で取引されるまでに回復した(水曜日のアジア取引時間早朝現在)。金と同様、米ドルの短期的な方向性は、今後数週間の間に貿易協定が結ばれるかどうかにかかっている可能性がある。DXYにとって、今週注目すべきサポート・レベルは98.76と98.30であり、レジスタンスは99.65である。
OPECがさらなる増産を検討している模様で、原油は再び圧力を受けている。供給増の見通しが原油価格の足を引っ張っている。WTI(米国産原油)価格は火曜日に約2.5%下落し、地政学的緊張の緩和(戦勝記念日前後にロシアがウクライナとの紛争で72時間の停戦を発表したことなど)により、価格からリスクプレミアムが取り除かれた。原油相場は、貿易や地政学的なヘッドラインで大きく揺れ動いており、目先の見通しは中立。注目すべき水準は59.40ドルと58.70ドルのサポート、レジスタンスは61.30ドルで、62.65ドルを試す厳しい展開が予想される。

今週は、米国の貿易取引への警戒はもちろんのこと、重要な経済データが目白押しだ。その筆頭が米GDPとコアPCE価格指数(ともに水曜発表)で、その前に金曜の非農業部門雇用者数(NFP)が控えている。2025年後半におけるFRBの金利動向を見極めるために、これから週明けにかけて多くのデータが発表される。